スピーカーの音がどうもしっくりこないとき、機材を替えたくなることがあります。
「もう少し低音が欲しい」「ヴォーカルが真ん中にピタッと定位してほしい」「高域が少しきつい」。私も、そんなことを何度も繰り返してきました。
でも、B&W 705 S3を使うようになって改めて感じたのは、スピーカーを買い替える前に、まだ動かせるところがかなりあるということです。
705 S3でも、最初から今の位置に決まったわけではありません。低域がもう少し欲しくて背面の壁へ近づけたり、バスレフポートのスポンジを付けたり外したり、内振り角度を変えたりしました。ところが壁へ近づければ低音が豊かになるどころか、私の部屋ではむしろ低音がこもってしまったのです。
結局いまは、左右のスピーカー間が約1.5m、リスニング位置まで約1.5m、背面の壁から約50cm。内振りは約10度です。
高価なアクセサリーを足す前に、私はまずスピーカーの位置を見直したほうがいいと思っています。

1.まず左右のスピーカーと自分の距離を揃える
私が最初に確認するのは、左右のスピーカーとリスニング位置の関係です。基本は、左右のスピーカーと自分の位置で正三角形に近い形を作ること。B&Wの700 S3シリーズの取扱説明書でも、左右スピーカーを離し、リスニング位置との関係を整えるところからセッティングを始める考え方が示されています。
私の705 S3は、スピーカー間が約1.5m、スピーカーから耳までの距離も約1.5mです。かなり正三角形に近い配置になります。
まず高価な機材を足すより、左右のスピーカーから自分までの距離が揃っているかをメジャーで測る。私はここから始めます。
見た目では「だいたい同じ」に感じても、実際に測ると意外にずれていることがあります。数センチ単位まで神経質になる必要はないと思いますが、左右で大きく違っているなら、まずそこを揃えてから音を聴いてみる価値があります。

2.低音が気になるなら、まず壁との距離を変えてみる
705 S3を使い始めたころ、私は低域が少しタイトに感じていました。それなら壁へ近づければ低音が増えるのではないかと考え、実際にスピーカーを後ろへ動かしてみました。
確かに低域の量感は変わります。ただ、私の部屋では近づけすぎると低音がこもり、かえって聴きにくくなりました。そこで何度か前後へ動かし、現在はスピーカー背面から壁まで約50cmの位置にしています。
B&Wの取扱説明書でも、壁との距離によって低域の量感が変化することが案内されています。ただし、だからといって「壁から50cm離せば正解」ということではありません。部屋の広さや構造、家具の位置でも聴こえ方は変わります。
ちなみに私の部屋では、側面の壁まで約35cmしか取れていません。メーカーが示す理想的な条件をすべて満たしているわけではなく、普通の生活空間の中で置ける位置を探した結果が現在のセッティングです。
大切なのは「50cmが正解」と覚えることではなく、自分の部屋で5cm、10cmと動かしながら低音の変化を聴くことだと思います。
これはお金がかかりません。それでも、低音の量感や締まり方が変わることがあります。音に不満を感じたとき、機材を探し始める前に一度試してほしいところです。

3.内振りは「何度が正しいか」より、少しずつ変えて聴く
次に試したいのが内振りです。私の705 S3は現在、約10度だけ内側へ向けていますが、最初から10度と決めていたわけではありません。
705 S3は私には高域の情報量が多く感じられるスピーカーです。向きを変えると、高域の当たり方だけでなく、ヴォーカルの定位や音場の広がり方も少しずつ変わって感じられました。そこで真正面から始め、少しずつ角度を付けながら自分が聴きやすい位置を探していきました。
私は内振りに「正解の角度」があるとは考えていません。自分がよく聴く曲で、定位と音場のどちらが気持ちよく感じるかを探します。
最初から細かな角度を測る必要はないと思います。真正面、少し内側、もう少し内側という程度で比べるだけでも、違いを感じやすくなります。そこから気に入った方向へ少しずつ調整していけば十分です。

4.スピーカーの高さも確認しておく
ブックシェルフ型スピーカーなら、高さも確認しておきたいポイントです。B&Wもスタンドマウント型では、通常のリスニング位置でツイーターが耳の高さに近くなるような設置を基本としています。
私の705 S3はHAYAMIのスタンドに載せています。スピーカーとスタンドの間にはBlu Tackを使い、スタンドの下には大理石とハネナイトも入れていますが、この記事で最初に伝えたいのはアクセサリーの話ではありません。
スタンドやインシュレーターを買う前に、いま置いているスピーカーの高さが自分の耳に合っているかを確認するほうが先です。
左右の高さが揃っているか、椅子へ座ったときにツイーターの位置が大きく上下へ外れていないか。そのあたりを確認するだけでも十分です。
デスクトップでも考え方は変わりません。私がYAMAHA NS-BP200を使う場合は耳まで約50cmというかなり近い距離になりますが、それでも左右の高さや耳との位置関係は意識しています。
5.左右の環境は、できる範囲で揃える
意外に見落としやすいのが、スピーカーそのものではなく周囲の環境です。片方のスピーカーだけが壁へ極端に近かったり、一方の前に大きな家具が置かれていたりすると、左右同じスピーカーでも聴こえ方が揃いにくくなります。
もちろん、普通の生活空間を完全な左右対称にするのは現実的ではありません。私もオーディオ専用に設計された部屋で聴いているわけではなく、家具や壁の位置を含めて妥協しながら使っています。
生活を犠牲にして完璧な左右対称を作る必要はありません。できる範囲で大きな左右差を減らすだけでも、セッティングを見直す意味はあります。
たとえばスピーカーのすぐ前に大きな物があれば少し移動してみる、片側だけ壁へ極端に寄っているなら可能な範囲で位置を揃えてみる、といったことです。まずは今の部屋で無理なく変えられるところから試せばいいと思います。
6.壁から離せないなら、ポートやEQも使う
現実には、スピーカーを理想的な場所へ置けない部屋もあります。私のリビングにあるJBL STAGE A170も、場所の都合で壁から十分な距離を取ることができません。
A170は低域の量感が豊かですが、現在の置き方では私には少しぼやけて感じることがありました。そこで、B&Wで使わなくなったスポンジを利用してA170の下側のバスレフポートを塞ぎ、それでも気になる低域はWiiM ProのEQで少し抑えています。
一方、メインの705 S3ではバスレフスポンジの有無や、スポンジの芯を入れた状態も試しました。こちらは位置を調整した結果、現在はスポンジを使わない状態に落ち着いています。
私はEQやポートスポンジを最初から使うのではなく、まずスピーカーの位置を動かし、それでも解決しない部分を補うために使っています。
EQで細かな数字を追い込む前に、スピーカーを少し動かしたほうが変化を把握しやすいこともあります。壁から離せない、家具の都合で位置を変えられないといった制約が出てきたところで、ポートやEQを使えばいいと思っています。
【画像⑤ 挿入】
画像種類:実機写真
画像内容:リビングのJBL STAGE A170。壁との距離が十分に取れない実際の設置状態が分かる写真
役割:理想的な配置ができない場合の実例を示す
代替テキスト:壁から十分離せない場所に設置しているJBL STAGE A170
7.一度に全部変えず、1か所ずつ戻して聴く
最後は、セッティングを変える順番です。壁との距離、内振り、バスレフスポンジ、吸音材、EQを一度に全部変えてしまうと、結果が良くても何が効いたのか分からなくなります。
私も705 S3では、壁との距離、バスレフスポンジ、内振りをそれぞれ試しました。その後、部屋の響きも考えて背面へ吸音パネルを設置しています。測定して部屋の特性を完全に追い込んだわけではなく、最終的には自分がよく聴く音楽を流して「こちらのほうが自然に聴ける」と感じる位置を選びました。
オーディオのセッティングで私がいちばん避けたいのは、音を良くするための作業に夢中になりすぎて、音楽そのものを聴かなくなることです。
そのため私は、基準になる曲を決めて一か所だけ変え、聴いたあとに一度元へ戻して確認するようにしています。私ならLarry Carltonの「Room 335」のように何度も聴いている曲を使います。聴き慣れている曲だからこそ、低域の量感や中央の定位が変わったときにも気づきやすいからです。
【内部リンク:ここに「オーディオ試聴に使うリファレンス音源」関連記事へのリンクを設置】
私のB&W 705 S3は、現在この位置で聴いています
現在のメインシステムは、次のようなセッティングです。
| 項目 | 現在のセッティング |
|---|---|
| 部屋 | 約10畳 |
| スピーカー | B&W 705 S3 |
| アンプ | DENON PMA-2500NE |
| 左右スピーカー間 | 約1.5m |
| リスニング距離 | 約1.5m |
| 背面の壁まで | 約50cm |
| 側面の壁まで | 約35cm |
| 内振り | 約10度 |
| スタンド | HAYAMI |
| バスレフスポンジ | 使用していない |
| 背面 | 木製吸音ウォールパネル |
ただし、この数字を「705 S3ならこの位置が正解」と考えているわけではありません。実際、私の部屋では側面の壁まで約35cmしか取れておらず、メーカーが示す理想的な条件をすべて満たしているわけではありません。
それでも、部屋の広さや家具との兼ね合いの中で何度か動かし、音楽を聴きながら決めていった結果、現在はこの位置に落ち着いています。
メーカーの推奨位置を出発点にして、最後は自分の部屋と自分の耳で決める。私はスピーカーセッティングをそのくらいに考えています。
【内部リンク:ここにAL001「B&W 705 S3を実際に使って分かった音質・長所・弱点」へのリンクを設置】
スタンドやインシュレーターを買うのは、そのあとでも遅くない
スピーカースタンドやインシュレーターにも役割がありますし、私自身もいろいろ使ってきました。ただ、「低音がぼやけるからインシュレーターを買おう」「定位が気になるからケーブルを替えよう」と考えたなら、私はその前に一度スピーカーを動かします。
位置を変えるだけならお金はかかりませんし、気に入らなければ元へ戻せます。壁との距離や内振りを変えるだけでも、聴こえ方が変わることがあります。
お金を使わずに試せて、合わなければすぐ戻せる。スピーカーセッティングは、オーディオの中でもかなり試しやすい音質改善だと思います。
それで十分に満足できたなら、新しい機材を買う必要はありません。それでも「もう少しこうしたい」という部分が残ったところで、スタンド、インシュレーター、ケーブルなどを考えればいい。私はその順番のほうが、何を変えたいのかも分かりやすく、余計な買い物も減らせると思っています。
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まとめ|買い替えを考えたら、まずメジャーを持ってみる
スピーカーの音に不満が出ると、新しいスピーカーが気になります。私自身も何台も買い替えてきたので、その気持ちはよく分かります。
でも今なら、買い替えを考える前に一度メジャーを持ちます。左右の距離や壁との距離を測り、内振りと高さを確認してから、いつも聴いている好きな曲をかけてみます。
そこで音楽が気持ちよく聴けるようになったなら、それが一番安くて、一番うれしい音質改善です。
スピーカーを替えるのは、そのあとでも遅くないと思っています。
